「こんなこと覚えて、将来なんの役に立つのか?」

 

多くの人が一度は思う疑問ではないだろうか。我が子や塾生達に質問を投げかけられたことも一度や二度ではない。

 

たとえば、数学が苦手な人は「XやYなんて人生に出てこないし、意味がわからん」と思うだろうし、英語が嫌いな人は「外国なんて行かないし、そもそもスマホのアプリで対応できるし、将来はもっと高性能な翻訳機ができるだろうから大丈夫。まったく問題なし!」と主張されるであろう。私達も生徒達との会話の中で「大人だって、学校で習った英語なんてちっとも役に立たないって言ってるし、ずっと習ってるわりにはしゃべれない人ばっかじゃん」というやりとりは日常茶飯事だ。

 

これらはまったくもってその通りで、至極真っ当な意見だ。

 

表面だけを聞けば勉強したくないための言い訳のように聞こえるが、しかしこのような疑問・意見を持つことは実に正常であり、きわめて順調な成長の証であるので、保護者の方々は決して頭ごなしで否定せずにしっかりと受け止めてあげていただきたいと思う。むしろ、何の疑問も持たないほうが少々あぶない。

 

はたして、勉強は(ここでいう勉強とはあまり広義でとらえるのではなく、小・中学校で習う内容や受験勉強という意味でよい)人生において役に立つのであろうか。

 

これらについて今ブログ以降全5回で私の意見を述べていきたい。例によって話は長いが、お付き合いいただければ幸いだ。

 

①「役に立たないのは、勉強ではなくその人自身である」

 

いきなり結論を申し上げるが「勉強が役に立つか立たないか」ではなく「それらを身に付けていないその人自身が役に立っていない」のである。少々乱暴な言い方をすれば「その程度(義務教育レベル)のことが覚えられない人が、社会に出て何の役に立つのか」ということだ。

 

「英語なんて役に立たないよ」という人がいるが、実はそうではなく、英語を必要とする企業や組織、そういった社会からみれば英語を使えないあなたは「役に立たない」と判断されたのである。だから、仕事や生活の上で「英語が必要でない社会」で生きている。

 

生きざるを得ない、ともいえるだろう。つまり、英語が役に立たないとおっしゃる方々は「英語の能力がないからその方面の社会から認められなかった」と自分で自分の負の面を吹聴してまわっているのだ。そして、さらには悲しいことにそのことに気が付いていない。

 

実際、英語を使っている人は英語の勉強は役に立っている。学校で習ったおかげではなく、その後の留学や独学、教室通いで身に付けた人もいるだろうが、それでもゼロではなく、むしろ基本的な事柄は学生時代にしっかり身に付けている。

 

サッカーができないのにJリーグから声がかかることはないし、野球が下手なのにプロ野球のドラフト会議で名前が呼ばれることもあり得ない。音痴であればアーティストとして芸能事務所がスカウトすることはないだろうし、絵が描けない人の絵を美術館が飾ることの可能性はゼロに近いだろう。同じように、数学が理解できない人が数学関係の会社に合格することはないだろうし、理科に興味がない人に理系の仕事が持ちかけられることもない。

 

それらの道に進むことは自分の判断でもあるが、実は相手側もそれを望んでいない。

 

一ついえるのは、それらのことが身につけていない人間は「選ばれない」ということだ。だから、役に立つか立たないか、ということは君が判断することではない。

 

君自身が役に立つか立たないかを判断されるのだ。

 

現時点で明確な将来像を持っている人はいい。その将来の自分にとって必要なことを中心に学んでいけばいい。たとえば、私の母は理容師であるが、中卒で、今まで腕1本でやってきた。時代は違うが、まあそういう生き方の人にとっては英語も物理も歴史も必要ないだろう。

 

しかし、この先どうなるかわからない、将来像なんて今はまだ描けない、という人はとりあえず義務教育レベルの学習内容は身に付けておくべきだ。そして、それが次の教育につながる。自分がいつどこでどういう判断をされてもいいように準備をしておく必要がある。

 

人生、何がどうなるかなんて誰にもわからない。ましてや、この混とんとした現代では何がどうなるか、予測することすら難しい。

 

私だって中学高校のころ、塾を経営するなんて夢にも思っていなかった。そんな私はいま、学校で習ったすべての教科の学習内容が役に立っている。いまやそれが商売道具である。学生の頃は勉強より部活だったし、赤点連発の私が、だ。不思議なものだと思う。

 

まあ学生時代に身に付けていなくても、人間その気になればいつでもやり直せるから、今なにがなんでもすべての学習内容を身に付けておかなければその後の人生、詰むよ、というわけではないが、これだけは頭の片隅に置いておいてほしい。

 

「〇〇〇は役に立たない」とか「×××はやっても無駄だ」というのは『バカの自慢』だということである。

 

―――――今回はここまでです。全5回のシリーズ予定です。